壬生邸の庭

こちらへ移行とリハビリテーション

卓上の物体について

『卓上の物体について』


 半透明で艶やかで軽い。
 それは一見何かを刺すスティックの様な形状をしていた。
 片方の先端が滑らかなカーブを描き、錐の様にすぼまっている。その先には金属の針が取り付けられているようだ。
 プラスチックとおぼしき本体は黄色く着色されており、半透明であることから細長い筒を成していることがわかる。
 内部の中空にはさらに細いパイプが通っているが、材質ははっきりしない。ただしこれも半透明で、内部になにか黒いものが挿入されているのがわかる。
 錐状の先端の反対側は蓋が取り付けられている。このふたは完全に透明で着色されていない。内部には白いゴムのような物体がはめ込まれている。
 この蓋は押してみることができる。軽いクリック感とともに反対側の先端から黒い鉛筆の芯のようなものが繰り出される。続けて蓋を押し下げることで芯は規則正しく送り出される。

「それはシャープペンシルと呼ばれている」
 声が響いた。
「シャープ株式会社が開発したことからそう呼ばれている。もっともこれは和製英語で日本国内でしか通じない」
 ぼくはシャープペンシルと呼ばれた“それ”を改めて握りなおした。なるほどグリップ感はペンシルと呼ぶのにふさわしいもののようだ。
「ちなみに芯は堅さに応じて日本工業規格で種類が定められている。鉛筆より細い芯に強度を持たせるため芯の焼結時にプラスチックを混合していることも知っておくといい。この方式で製造された芯をハイポリマー芯という」
 声は饒舌だった。まだ何かいいたげな気配を感じたがもういいと手でさえぎった。
 鉛筆と同じ用途の物だとわかれば話は早い。
 迷うこと無く、ぼくはノートに文字を記しはじめた。